第13回 作曲/編曲/作詞 白戸 佑輔 (Yusuke Shirato) 氏
―この度は取材をお受け頂きありがとうございます。
白戸さんが音楽に目覚めたきっかけは何だったのですか?
白戸氏) 中学校に入るまでピアノを習っていました。
一旦そこで辞めて、学校にギターの上手な仲間がいて、彼に影響を受けて、彼の好きだったGuns N‘ Rosesにハマって、バンドやろうぜってなってましたね。
ちょうどマンガの「デスペラード」っていうバンドマンガがあって、自分はドラムを担当して。
―それはいつ頃のお話ですか?
白戸氏) 中学3年くらいですね。
ー多感な時期ですね。
白戸氏) そうですね。受験もあったんですけど、リハーサルスタジオってところに初めて行って、めちゃくちゃ感動して。料金も意外と安くて、ハマりましたね。高校生になって、オリジナル曲を作ろうってなったときに、まあ自分は昔ピアノをやってたので改めて本など購入し作曲を始めましたね。で作曲できるようになって。
ーすごいですね。
白戸氏) そうですね。J-POPだったんですけど、でそのあとなんだかんだピアノを習い始めたら、音大の夏季講習に誘われて。先生としては僕にピアノをあきらめさせるつもりだったようで。
ーあ、そうなんですか。
白戸氏) だったんですけど、逆にピアノ科の夏季講習行ったのに「自分作曲やりたい」って言いだして。笑)オーケストラとかやりたいって。で作曲の先生を紹介してもらったという感じです。当時まだ高校2年生でしたが、その時に音大を目指しましたね。
ーそうだったんですね。
白戸氏) そこから大学に行って。将来は音楽の先生になろうとも思っていた時もありましたね。クラシックとか書いて。当時、着メロの作曲のバイトがあったんですよ。1曲7000円とか。
ーそれは自分でオリジナルを作曲するんですか?
白戸氏) 耳コピですね。いわゆる世に出ている曲の。そこで椎名林檎さんの曲に出会って、で、ベースがかっこいいと思い。亀田誠治さんですね。それきっかけでベースも始めました。その辺からプロを意識し始めたのは。
ー職業にできるという。
白戸氏) そうですね。ただベースは断念したもののやっぱり作曲に戻ってきて。で作家事務所に所属などして。コンペに受かって今に至るといった感じです。
ー初めてコンペに参加した時期は。
白戸氏) 2008年とか。
ー仕事として動き出したのは。
白戸氏) コンペに受かったのは一番大きかったですね。
ー作品を生み出す際のきっかけって何かあるのですか?ひらめきのような?
白戸氏) そうですね。例えばピアノの曲ならピアノの楽曲など聴きながら、「なんかできそう、」みたいなことはあります。その都度何か刺激を受けるっていうとこはあります。
ー今日まさに取材させていただいていますのはご自宅のスタジオ環境という事で。
白戸氏) そうですね、最初はせっかく自宅を購入したので本格的スタジオをと考えていたのですが、まずは部屋の作業部屋でもいいかなと思いまして。でもそこからルームアコースティックといいますか、音響を整えていきながら、もうちょっとやりたくなってくるという気持ちも芽生えたりして。/
ーやっていくうちに本格的スタジオを考えている?
白戸氏) はい、今はそういうモチベーションでやっていますけどその過程でスピーカーにも欲が出てきて。
ーとはいえ、本格的というとなかなか大変ですね。
白戸氏) そうですね。
ーいまはオンラインなどでのやり取りもできて。
白戸氏) そうですね。時間の有効活用にもなるし、いい時代です。
ーいまは理に叶っている。
白戸氏) そうですね。ストレスなく。
ーところでKSdigitalを使う前は何をお使いでしたか?
白戸氏) Focalですね。CMS。
ーFocalは長くお使いでしたか?
白戸氏) そうですね。長かったですね。でも実は一番名が立ったのはNF01A(Fostex)ですね。これが最強すぎて。何かというとすごくナチュラルで、低音出すぎてもいない、高域も伸びてすごく良い印象でした。
ーKSD C5-Referenceの印象はいかがですか。
白戸氏) めちゃくちゃクリアーですね。低域も高域も見えやすくて。サブウーハーなくてもよくて。でもB88があるとより見えるので全然良くて。
ーB88を一回聴いてしまうと。
白戸氏) ええ、聴いてしまうと絶対あったほうが。そーなんですよね。あとSonarWorksの音場補正などは試みています。
ー具体的にC5を導入して良かった成果はありますか。
白戸氏) ミックスの時に高域が見えやすくなってコンプ、EQがとても掛け易くなって、その辺の作業時間が減った気がします。僕の場合はそこまでミックスを追い込まないといいますか、整えるだけでも結構時間かかってましたんで。それは助かってます。あと作業やってる時のモチベーションですかね。ここまでクリアーだとテンション上がりますし、小音量でも全然良くて、すごく聴こえてくるので。下も上も。ヘッドホン要らない感覚です。
ー見えやすいってメリットですね。
白戸氏) いや、めちゃくちゃメリットあります。時間短縮になります(笑)。一秒でも作曲の時間に費やしたいので、以前はヘッドホンで細部を確認しつつ、プラグインのかかり具合を調整してましたが、それをやらなくなりました。音量関係なく低域も高域も確認できる。
ーヘッドホンは多用するのですか。
白戸氏) はい、もちろん。今まではヘッドホン頼りだったのは事実ですね。今までは。
ーヘッドホンも試行錯誤はあったのですか。
白戸氏) はい、いろんな種類を試して結局一ランク上の高いリスニング用のを買ってやってましたね。
BayerDynamicのT1を使ってます。
ー本格的な作業はスタジオに行ってやるのですね。
白戸氏) はい、ここでは音を作って。データを投げて。
ーご自宅の作業スペースでの作品のクオリティーについてはあるレベルを目指して作業されていますか。
白戸氏) やっぱりデモを出すときにプロデューサーだったり納得してもらうために。ミックスも整っている感じだとか。だから作りながらやっていくという感じです。だからある程度決めています。ここまでっていうのは。あとレーベルだけではなく、映像系のスタッフさんとか、余計音楽に慣れていないから、その方々に対して、気を使っています。「いやまだラフなんです。」なんて通じませんので。「いいですね。」てなって「ここからさらに良くなります。」みたいな。そこまでやってます。
ー第一印象大事ですね。
白戸氏) もう、そうですね。
ーこの作業スペースに来て誰かに聴かせるとか?
白戸氏) それはないですね。でもそれ出来たらいいですね。バイオリニストとか来て弾いてもらったりとかはあります。
ーオーケストラの作曲とかもできるってすごいですね。
白戸氏) 手法は同じといいますか。例えばシンセとかはプリセットとか、どうしたどうなると試さないといけないんですが。音を重ねたらよくなるとか、音色が無限なんですよ。でもオーケストラは楽器が決まっていて、例えばチェロとコントラバス混ぜりとこういう音になるとか、ある程度予想がつくんですよね。そういう意味ではオーケストラのほうが簡単です。
ー定番というか定説のようなものが存在して。
白戸氏) はい、ありますね。こうすればこうなるみたいな。実験みたいなものはありますよ。フレーズこうするとどうなんだみたいな。シンセは無限なイメージがあります。
ーいい曲ができる時って。
白戸氏) ひらめきと迷いがないことと直感プラスアイディアがあってですね。迷うとよくないですね。これだと思ってバーとやって、でもその中で試行錯誤しながら。あそこは最後こういう風にしようと仮説を立ててそれを組み立てたときに「なんか違うな」とか(笑)。
ー深いですね。
白戸氏) 仮定と証明みたいなものですね。やってみて実際どうなる?とか。
ークリエイティブですね。でもめちゃくちゃ大変そう。
白戸氏) 大変ですね。何が大変ってプレッシャーですかね。でもまあC5によって迷いもなくなって、見えますし、B88の存在は大きいですね。で、やりすぎたなあっていうときの感じも見えますし、それも助かっています。他のスピーカーだとわかりづらかったですね。
ーなるほど。
白戸氏) 今までだと「ごちゃっと」した感じでいいのかなって思っていましたが。C5はヘッドホンライクに使えますので、すぐにわかって「じゃあアレンジ変えよう。」みたいな判断ができます。
ーそれが今までのモニターではわからなかったというか。
白戸氏) そうですね。ヘッドホンでしかわからなかったのがC5だと判断できる。それはとってもいいですね。
ー同軸ユニットっていうのはどうでしたか。
白戸氏) そうですね。僕は同軸っていうのは自分で使うのは初めてだったんですが、最初はどうやって音が出てるんだろうって思いました。でもこれで行こうと思ったのは即断できました。明らかにクリアーだったので。
ーFocalからKSDに代わる前に他のモニタースピーカーも試聴されましたか。
白戸氏) ADAM A7とか。でも自分には合わなかったですね。
ーKS DigitalのDSPの性能は元となるメーカーでBackes &Mullerというメーカーがあってリスニングスピーカーでかなり長い歴史を持っていますがその辺のノウハウが生かされているので6インチという小さい口径ながらにして聴きやすいというかそのあたりは音に反映されていると思います。
白戸氏) なるほどですね。だからですね。
ーこの度は貴重なお話を聞かせていただき本当にありがとうございました。
<プロフィール>
1981年に茨城県で生まれ、子どもの頃よりクラシックを聴きピアノを習う。
高校でドラムと作曲に目覚め、その後、東京音楽大学作曲科へ入学。室内楽、オーケストラ、などの作曲をしつつも、
大学3年時にベースをはじめ卒業後はベーシストとして活動。
2007年に作家活動をはじめ、現在は様々なアーティストへの楽曲提供やサポート演奏を手がける。
ピアノ、ストリングスを活かしたアニソン、アイドルソング、またそれとは対照的に心に染み入るバラードが定評を持つ。
アニメOP、ED、TV主題歌、挿入歌など。パチンコ、映画、ゲームなどのBGMや主題歌なども手がける。
最近制作参加の作品
推しの子・ウマ娘・マクロスΔ・ 魔法使いの嫁・アイドルマスター・あんさんぶるスターズ 等