第17回 レコーディング・ミキシングエンジニア
村松 知哉 (Tomoya Muramatsu) 氏
―この度は取材をお受け頂きありがとうございます。
―村松さんのエンジニアのキャリアからお聞きしても良いですか。
村松氏)自分は元々バンドマンでドラムを叩いていました。
―そうなんですね。
村松氏)バンドでCDを出すとかなったときに、自分たちでDTMやって音源制作してみるかってところから入っていきました。その時自分のドラムの師匠の方がドラマー兼エンジニアもやっていてその方からエンジニアリングの事をいろいろ教わりました。専門学校とかも行かずに。
―じゃあもう独学なんですね。
村松氏)そうもうほんとに独学ですね。師匠もそこまでちゃんと教えてくれる感じでもなかったので。
―そこからエンジニアのキャリアをスタートさせたんですね。
村松氏)キャリアといっても仕事は自分で取ってきて、師匠からもらったりだとかは全くなくて。自分から知り合いのバンドマンとかに声かけて営業していって、いろいろ関わらせていただけるようになってみたいな感じです。
―舞台音響機器メーカーにもお勤めだったとお聞きしましたね。その時は会社に在籍されていたんですか。
村松氏)はい、同時進行でその会社に在籍しておりました。
―就職もして。
村松氏)就職のタイミングで忙しくなってドラムもライブとか土日しか行けないとかでちょっと携わるには厳しくなってバンド活動は辞めて悩んだ時期もありました。
―バンドの活動は何年ぐらいやってらっしゃったんですか。
村松氏)高校の軽音部からやり始めてそのころからオリジナル曲もやっていました。バンドっていうと8年くらいですね。
―すごいですね。がっつりやってたという。
村松氏)ドラムで飯食っていこうみたいなことも思っていましたが結局エンジニアになっていますね。
―すごいですね。二刀流。
村松氏)二刀流、そうですね。(笑)
―ではKSDを知ったきっかけについてお聞きします。
村松氏)バンドマンの時に楽器屋に行って最初に見つけた感じです。その時はC8-Coax?
―あ、1世代前の。
村松氏)それを見て「このスピーカーめっちゃ可愛いなあ」みたいな。それがファーストインプレッションです。
―C8の音だけは聴いて。
村松氏)ちゃんと聴いていたわけではないですが「音かっこいいな。」みたいなのがあったのでいつかこういうスピーカほしいなあと思いつつ、そこ頃はドラマーだったのでその時はスルーしてというのが最初でした。
―そのほかにも印象に残るようなスピーカーはありましたか。
村松氏)その時はFocalのShape50とかが出てて、それもかっこいいなあって思っていて。でもその頃はちゃんと聴けていなかったもので。
―このスタジオを作ったのは最近なんですか。
村松氏)2年前です。このスタジオを作ろうとなった時にスピーカー、ちゃんとしたのが欲しいと思って、その前までADAM F5っていう安いグレードのものがあってリスニング用で買って置いてあったんですけど、ちょっとそれが物足らなくなって、ちゃんとミックスやるんだったら奮発してスピーカー買おうとなって。そこから楽器店とかに行っていろいろ聴いて。自分はなんか同軸良いなって思って。
―あ、そうなんですね。
村松氏)その理由はあんまりないんですけど、同軸の見た目かっこいいなと思って。
―同軸って音がちょっと特徴的ですよね。慣れとかはいかがですか。違和感とかなかったですか?
村松氏)僕はなかったですね。ずっとヘッドホンでミックスしていたのでそこから移行した時に違和感はなかったですね。
―割りとヘッドホンに近いというか。
村松氏)そういうのもあってあんまり違和感はなかったです。Genelecの8331とかも聴きました、後はADAMのA7V、そのあたりの価格帯をKSD C8と比較した結果、一番解像度的なのが良かったのがKSD C8-Referenceでしたね。ぱっと聴いてぱっとわかるみたいな。
じっくりこう耳澄ませて考えながらやらなくても判断がつくという感じです。
―確かに。
村松氏)ミックスとか時間勝負もあるので。
―ほんとに皆さん同じ感想です。
村松氏)あ、本当ですか。
―作曲家の方とか。作曲のほうに頭を使いたいので音に悩みたくないんです。みたいな。
村松氏)確かにそうですね。悩まなくて済むなあっていうのはありますね。だからヘッドホンも要らないなあっていう。定位もすごくばっちり合うので。パンニングとか
―ここですとちょうど1mくらい。
村松氏)そうですね。取扱説明書にある最適な距離なので。
―なるほどです。このスタジオ、最初からC8ですね。
村松氏)はいそうですね。
―モニタースピーカーに求める最低条件といいますか必須条件とかありますか。
村松氏)ジャッジのしやすさ。あとヘッドホンでミックスしていましたが、ヘッドホンとか交互で使い分けるのもあまりしたくなくて、スピーカーだけで完成させられる定位の良さとか、解像度とかあるのが良かったので
―ヘッドホンも長時間はつらいですね。
村松氏)つらいです。眼鏡もかけているのでバンドと当たって耳が痛くなっちゃったりとか。
―録音現場とかではいかがですか。
村松氏)録音の現場に持って行ったことはないのですが、でもやっぱり録音現場で聴いて、現場では納得してスタジオに戻って聴いたら「あれ」みたいなこともあるので。録音現場にも持っていけるようにはしたいです。
―外で録音してきた音源についてはリアルに感じますか。
村松氏)そうですね。こうなってたんだろうなっていう。
―パワー感はいかがですか。
村松氏)もう12分ですね。もっと広くても十分だと思います。
―ちなみにB88(サブウーハー)もお貸出しして試聴して頂きましたが2.1chのイメージはいかがでしたか。
村松氏)この環境(約7畳)だとロー(低域)が回って。もちろんもっと広い部屋とかなら絶対B88の組み合わせはいいだろうなって思いました。
―B88を足したときの印象は変わりますか。その変化は感じますか。
村松氏)結構感じますね。ローの余裕感はB88を足したほうが良いですね。部屋の容量のバランスですね。C5+B88はいいような気がしますね。
―ほかのメーカーと比べてKSDらしさを一言でいうと。
村松氏)やっぱり解像度ですね。解像度と定位。この二つです。ですね。自分は。完璧にばっちり合うので。
―作曲される方とかは気分が乗ってくるというか。
村松氏)確かに躍動感というか生々しさというところはあるなって思って。多分そこイコール解像度かなって思って。
―確かに表現の違いはあるかもですね。
村松氏)エンジニア的に言うと解像度。リスナー目線でいうと例えばエリッククラプトンの曲とか聴いたりするといかにもここにクラプトンがいるような感じに聴こえたりとか、そういうので解像度だったりとか生々しさだったりとかそういう言葉になってくるのかなあっていう。
―さらに改善というかリクエストしたい事とかありますか。
村松氏)C8にAES入力があれば。AD/DAの変換がもったいないなあと。
―確かに。上位機種に行くとAES入力はあるので。
村松氏)そうなんですよね。
今回は貴重なご意見ありがとうございました。
<プロフィール>
村松 知哉(ムラマツ トモヤ)氏
レコーディング・ミキシングエンジニア
東京都武蔵野市生まれ
ドラマーとしてバンドマンとしてライブ演奏やサポート、レコーディングをこなしていたが、2022年にミキシングも手がけるようになる。現在はフリーランスとして様々な作品を手掛けている。