第27回 吉本興業株式会社
コンテンツ事業本部 音楽事業部
土岐秀一郎(Shuichiro Toki)氏
Make Hits Production株式会社 谷 正太郎(Shotaro Tani)氏
―この度は取材をお受け頂きありがとうございます。どうぞよろしくお願い致します。 KSDレビュー取材で2度目のダブルキャスト取材です。土岐さんと谷さんはいつからのお付き合いなのですか?
谷氏)それこそJin Nakamuraさんのプロジェクトで。
土岐氏)Jin Nakamuraさん、当時のよしもとミュージックの社長と仲の良い知り合いでして、社長からの御指名でJinさんを紹介して頂き、私が担当しているアーティストの楽曲をJinさんにお願いしたら快諾して頂き、その時のマネージメントが谷さんだったんですよね。
―そうだったんですね。
土岐氏)でまあ、こちらのスケジュール調整とかリクエストを谷さんがマネージメントしてくれて、本当に気持ちよくお仕事させていただきました。
谷氏)いいえ、とんでもないです。
―やっぱりマネージメント側の力量って大きなファクターですね。
土岐氏)ええ、もう大きく違いますよね。谷さんにはすごく助けて頂いて。大プロデューサーのJinさんとご一緒できる機会も少ないので私にとっては非常に貴重な経験でした。その節はJinさんのスタジオとかお邪魔させていただいて。
―もうかれこれ何年前の話ですか。
谷氏)もう10年は経ちますね。
土岐氏)そのあと谷さんがエイベックスに行った時にも谷さんのマネージメントされているトラックメーカーの方と僕の担当しているアーティストの曲を何曲かご一緒させて頂いたりとか。
―長いお付き合いなのですね。
谷氏)はい、そうですね。
土岐氏)谷さんがスタジオを作ったって聞いていたのですがなかなかお邪魔できず。
―今日が初めて?
土岐氏)いえ、2回目ですね。去年くらいですかね、谷さんが弊社よしもとのスタジオに打ち合わせに来ていただいたときに、KSD C5を是非聴かせてほしいという事で、実際聴いていただいたら。
谷氏)はい、初めてC5を聴かせていただいたときはもう、ものすごく感動しました!
―そうだったんですね。谷さんはそれまでKSDは聴いたことがなかったのですね。
谷氏)そうですね。なかったです。あの時、よしもとのスタジオのC5で山下達郎さんの曲を聴かせていただいて。
土岐氏)そうでしたっけ。
谷氏)達郎さんがもう目の前にいる気がして。(笑)その時すごく感動したことを覚えています。
―土岐さんには私がよしもとのスタジオメンテナンスの作業の際、KSD C5の紹介したのがきっかけでしたね。
土岐氏)そうそう。僕もあの頃ずーっとスピーカーを探してたんです。自分が気持ちよく聴けるリファレンスのスピーカーっていうのを探していて。
僕は仕事柄いろんなスタジオに行く事が多いんですけど、それまでは多くはGENELECでモニターしていました。
それもあって本当はGENELECの1031とか欲しかったんですよね。
―なるほど。
土岐氏)当時このような同軸系のモニタースピーカーはすくなくて。エンジニアの方に相談すると「GENELEC大きすぎて家では鳴らすの無理があるよね。」みたいな話で。言われてみたら確かにそうかと。音は好きなんだけどなあって。
その後、各メーカーのスモールスピーカーが出るたびにお店で試聴もしてたんですが、自分の中でなんかこれってのが無くて。なんとなく、違うなーって思っていました。
その時に稲田さんがたまたまC5-Referenceを紹介してくれたんですよね。
―そうでしたね。
土岐氏)その時、早速よしもとのスタジオに持って来てくれて。それで一発目聴いたら「なんだこれ!」って。「やばいこれ」と。とにかく聴いているだけでテンションが上がる。
すぐに、その場で1週間ぐらいお借りして。それからお借りしている間はもう自分のリファレンスのCDとか聴きまくっていました。ほんとに時間を忘れるくらいでしたね。なんか気持ちいいなあって。
―僕もよく覚えています。あと時土岐さんと一緒にTOTO聴きましたよね。二人で盛り上がっちゃって。(笑)
谷氏)ステーブ ルカサー!!
―良いですねーって(笑)
土岐氏)もうそれで、返すの嫌だなあって思っちゃって(笑)
―すぐに予算付けて頂いて。早い決断でしたね。
土岐氏)これ買ってからはもう外のスタジオでマスタリングやTDが終わったらここに戻ってKSDでチェックとかするようになりましたね。気が付いたらずーっと聴いてる。みたいな。
―そうでしたか。土岐さんは普段スタジオワークの時は何でモニターしていますか?
土岐氏)基本、外のスタジオの時はヘッドホンで作業しています。
―普段はどんな流れでお仕事をされていますか?
土岐氏)よしもとのスタジオでは以前はエンジニアを呼んで僕はディレクションだけしてたりとかしてましたが、いまはもう自分で回してディレクションして、セレクトしてみたいな感じになってきましたね。最近はそうなってますね。
―ひとりで何役もこなされていますね。 土岐さんはよしもとに入社されてもう長いんですか?
土岐氏)入社してもう24,5年ですね。
―長いですねー。基本的にはディレクションの立場で。
土岐氏)ディレクターですね。はい。自分はディレクションしているのが好きですが、今は立場的にもA&R的なもうちょっとその宣伝とかいろんな契約とかも含めて立ち振る舞わなきゃいけない年齢になっちゃのでそんなこともやりつつ。
―そうなんですね。大変な役回り。
土岐氏)いえいえ、でも自分はスタジオ作業が好きなので、それこそJinさんとか去年おととしくらいは亀田さんとかセッションさせてもらったり佐橋佳幸さんとかともやらしてもらった時に、やっぱり皆さんの取り込む姿とかどうゆうにジャッジしてるのかなあとか。常に勉強させてもらっています。
―現場でしかわからないことがありますよね。
土岐氏)いい意味で僕も年齢も経験も重ねて、だいぶ自分自身のやり方も変わってきましたね。昔はバンド入れたらいいテイク取れるまでずーっと待ってみたいなことでしたけど、亀田さんとか佐橋さんとか見ていると2,3回セッションやってそれこそミュージシャンが飽きないうちにさっと切り上げて「もうOK」みたいな。
―なるほど。さすがです。
土岐氏)なのでいろんなことを考えさせられるというか。Jinさんとかの場合、メインの歌を録ってるんだけど実はダブルも録ってるみたいな。本来はメイン取った後に「はい、これからダブル録るよー」ってなるんだけどもう自動的にダブルも録れててみたいな。
―すごい。
土岐氏)なるほどー。みたいな。そういう事もすべて考えながら録ってらっしゃるんだなあと。視野広くやってらっしゃる姿はすごく勉強になりましたね。
―凄いですね。土岐さんは経験豊富でいろんなスタジオに行ってそれぞれの環境の音について何か感じるものはありますか。
土岐氏)モニター環境については結局どのスタジオでも、それぞれになっちゃうんで僕はヘッドホンで作業することにしたんですよ。それぞれのスタジオにGrace designのヘッドホンアンプを持ち込んでSONY MDR-CD900STで作業やってます。他の皆さんはスタジオのモニタースピーカーで聴いていますが、僕だけ自身のヘッドホンで。(笑)もっと言ったらCUEBOXを出してもらって演奏者と同じ環境で聴いたりしています。その状態でディレクションして構えてます。スタジオワークは好きなんですけど、その都度環境も違うからヘッドホンでやれば全部思い通りにできるんですよね。
―確かに。そうですね。 谷さんはMake Hits Labのスタジオを作ったのが3年前。
谷氏)はい、ここに来くる前もやっていましたので、そういう意味ではもっと長いですね。
―ここに来る前はどんなモニタースピーカーをお使いだったんですか?
谷氏)FOCAL SHAPE TWIN,TANNOY GOLD 7とAURATONEです。
―モニタースピーカーを選ぶ基準などありましたか。
谷氏)SHAPEに関しては当時スタジオを使ってくださっていたクリエーターさんのお薦めでした。GOLD 7については同軸でしかもコスパが良かったですね。音も気に入っていて。
―確かに。賢明な選択かと。土岐さんはC5を使うようになって何か変化はありましたか?
土岐氏)C5は完成形に近い音を出してくれるというか。TD,マスタリング前でも、もうすでにマスタリングが終わったかのような音を出してくれます。誤解のないように、言い方が良いかわかりませんがいい意味で派手に聴こえさせてくれている、それが僕は非常に心地よくて「あー、これを聴くために作ってきたよね。」みたいな。いい意味で確認できるのが良いですね。
皆さんがどうかは別ですけど、C5の低音の鳴り方がすごく好きで、なんかこう太いですけど、強すぎず、ドスンと来てくれている感じ。というのが聴いていて一番気持ちいのかも。
―そこらへんがKSDのFIRTECH技術の恩恵かと思います。
土岐氏)あたかもサブウーハー足してるみたいだけど、ドスドス鳴ってない感じというか。
―分離してないし、良い感じで混ざっていますよね。
土岐氏)それが1時間でも2時間でも聴けてしまう良さなんじゃないかと。
スタジオに行ってバンド録っているときに、僕の中では常に低音の問題が生じることがあって、ベースがどれくらい鳴っているか、キックがどれくらいの距離感にいるかとか。わからないなあと思ってここに帰ってきて改めてチェックすると、「合ってたなあ」とか「もうちょっとほしかったなあ」とか。
それを次のセッションの時エンジニアに伝えたりとかしてます。楽器のチューニングを変えてもらったりとかしたりとか。本当はこれを家に持って帰って家で聴いてみたいです。(笑)
家の空間に置いたときにどんな風に聴こえるのか興味あります。
―家で聴くとまた良いんでしょうね。谷さんはC5を聴いて、その後このスタジオではC8,C88も試聴して頂きました。その時の印象はいかがでしたか。
谷氏)私の中ではKSDはもう素晴らしいスピーカーであることは間違いなくて、ここをご利用いただくアーティストさん、クリエーターさんにすごく好評を頂いております。
部屋の容積からしたらC88はオーバースペックかと思いますが、Make Hits Labは完全な防音された環境ですので最終的なジャッジとしてしっかり鳴らせるC88-Referenceを選んだという感じです。
私はどちらかというと大きい音で聴きたいので(もちろん小音量でもバランスが崩れませんし)ここだと各音源のに対してオイシイところまで音量を出せるというのが良くて。しかも聴いていて痛くない。ですからこの環境ですとKSDの良さを引き出せると思ったのでC88-Referenceをチョイスしました。
―今回は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
<プロフィール>
吉本興業株式会社
土岐 秀一郎(Shuichiro Toki)
1974年生まれ
1994年 レコーディングスタジオにて勤務
1996年 黒夢マネージャー
1999年 吉本興業株式会社での音楽事業部でA&R / Directorとして業務
現在に至る。
【Work List】
PENPALS / REVERSLOW / Foxxi misQ / YU-A / Runny Noize / Rev.from DVL / 中孝介 / NMB48 / ニューロティカ
オール巨人 / 間寛平 / 吉本新喜劇ィズ / 未知やすえ・内場勝則 / 紫SHIKIBU /ジュースごくごく倶楽部 / チョコレートプラネット / みどりくん。/ ひょっこりはん / 鈴川絢子 / 美炎 / ウルトラズ etc…
谷 正一郎(Shoichiro Tani)
1981年生まれ
Make Hits Production株式会社 代表取締役
Make Hits Production株式会社は、1996年より音楽業界に従事し、
個人事業主として活動していた谷正太郎が、令和元年に自己資本100%で創業した合音楽会社です。
〇主な業務内容
・音楽出版
・音楽家紹介
・音楽制作
・音楽制作スタジオ運営
・音楽機材販売
1981年 1月2日大阪府泉南市出身
母と緑内障で目が不自由な祖母に育てられる
1993年 上宮太子中学校入学
1996年 大阪YMCAインターナショナルハイスクール入学
1996年 北堀江Club Ring&Boomで「DJ SHOW」としてDJデビュー
1997年 NY州へ語学留学
1998年 帰国
1999年 SHINGO☆西成専属DJ契約締結
2000年 ASUKA(ARIA)専属DJ契約締結
2001年 ROCK THE HOUSE DJ BATTLE 準優勝
2002年 カセットテープ作品「DOING」1000本完売
2003年 上京
2004年 UNIVERSALMUSICオフィシャルHIPHOP R&B MIX「THE MIX SHOW」(UICZ-3033)発売
2005年 Victor Entertainment,Inc オフィシャルMIX CD「MIRROR BALL SUPER DISCO MIX」(VICP-62866)発売
2005年 東芝EMIオフィシャルMIX CD「ディスコ バイキング メガミックス」(TOCP-64287)発売
2007年 MONSTER MUSIC「BUMPIN’」(Vol1〜Vol5)発売
2008年 松下優也LIVE DJに着任
2009年 ネスレ「キットカット」公式アーティスト「スルーザブレイク」専属DJ契約締結
2010年 作曲家Jin Nakamura氏を師事し、マネージャーとして音楽出版業・ライツビジネスに携わる
2011年 結婚
2012年 VESTAX NO TRICKS DJ BATTLE2012 準優勝
2012年 株式会社ユーズミュージックに入社
2013年 作曲家多田慎也氏のエージェントに着任
2014年 So So Def South Side Studio Atlantaで行われたソングキャンプに参加
2014年 一般社団法人日本音楽出版社協会(MPA)音楽著作権管理者養成講座試験合格
2015年 株式会社ユーズミュージックを退社 再び個人事業主として活動を開始する
2016年 エイベックスミュージックパブリッシング(株) と「Song Plugger」として業務委託契約を締結(2022年契約満了)。
コペンハーゲン、ロサンゼルス、アトランタ、韓国でSongCampのオーガナイズ、共催を行う。
2019年 Make Hits Production(株)を令和元年に創業、次世代型レコーディングスタジオMake Hits Labを設立
2020年 JASRAC、NexToneと信託契約を締結
2022年 一般社団法人日本音楽出版社協会(MPA)音楽著作権管理者養成講座 フォローアップコース(50時限)修了
2022年 商標登録が完了(第35類・第41類)
2022年 株式会社LDH music & publishingと音楽出版に関する業務委託契約を締結
2023年 サウンド&レコーディング・マガジン 音響設備ファイル【Vol.77】にMake Hits Labが特集される
2023年 Sonic Synergies Engineering 合同会社と業務提携締結
2024年 電子入札用電子証明書の審査が完了 (証明書番号 D2401131P0000034)
2024年 株式会社スタジオイクイプメントと販売店契約締結