第19回 マスタリング・カッティング エンジニア
富岡 真紀 (Maki Tomioka)氏
―この度は取材をお受け頂きありがとうございます。
―マスタリングスタジオにKSD C5-Refrenceの導入ありがとうございます。今回、日本コロムビア株式会社スタジオ技術部 マスタリングエンジニアの富岡さんと田林さんにお話を聞くことができました。
―まず田林さんにお聞きしますが、このスタジオのスピーカーはムジークですがその以前は何だったのでしょうか。
田林氏)はい、ラージスピーカーは B&W を使用していました。
古いシリーズのB&Wでしたので、今の若いエンジニアが使うには難しい面もあって、まずはラージスピーカーを変えようという話になりムジークに変えました。
私は別の部屋でラージスピーカーは GENELEC、スモールスピーカーはムジークを使っていています。
―そうなんですね。
田林氏)なのでこの部屋にもスモールスピーカーでムジークを入れようと思ったんですけど、ラージもスモールも同じムジークになってしまうのもどうかと思いまして。じゃあ何か他のスピーカーを探してみようという話になりました。
―ありがとうございます。では富岡さんにお聞きします。富岡さんはB&Wからムジークに置き換わるときはいらっしゃたのですか?
富岡氏)いましたが、私は入社してすぐムジークに変わったのでB&Wを使って作業はあまりしていません。
―今入社されて何年目ですか。
富岡氏)今4年目になります。
―もう長いですね。スタートからほぼムジークで作業されて。
富岡氏)ほぼムジークですね。
―ニアフィールドモニターは何だったのでしょうか。
富岡氏)セレッションが一応ありましたが、ほとんど使っていませんでした。私自身、今までラージとスモールを併用してマスタリングすることは少なかったんですが、最近やっぱりスモールの必要性も感じたので、この部屋にもスモールの導入を検討し始めました。
―スモールスピーカーを導入検討にあたり他のメーカーのスピーカーも試聴されましたか。
富岡氏)はい。Focal,Neumann他いくつか試聴しました。
―それぞれのメーカーの印象はいかがでしたか。
富岡氏)Focal は自然な感じがして位相などが忠実に聴こえる感じでした。Neumann のスピーカーも印象良かったです。
―なるほど。
富岡氏)KSD はその中でサイズの割にパワーがありましたね。第一印象は KSD が一番良く感じました。
―ありがとうございます。マスタリングスタジオの実績ですとビクタースタジオの袴田さんの部屋に導入して頂いて。
ここと同じ構成ですねムジークRL901とKSD C5-Referenceですね。
スモールスピーカーの導入と選定にあたりどういう点を注目されていましたか。
富岡氏)作品を作る際に大枠はラージのスピーカーで作業しますが最終的に小さいスピーカーで聴いてバランスとか、ノイズとか、歪ノイズなどをチェックします。ラージのスピーカーでは聴き取れなかったりする歪ノイズの聴き取りやすさを気にして選定しました。
―その中でKSDはいかがでしたか。
富岡氏)好みかもしれませんが私の中ではバランスが良く聴こえてチェックができやすいのと歪みやノイズもちゃんと聴きとれるというのはありました。
―ありがとうございます。
富岡氏)解像度もあって小さい割に低音も出るので助かっています。
―内蔵のイコライゼーションはノーマルのままですか。
富岡氏)いえ、低音はほんの少し下げています。ノーマルだと少し出すぎかなあと思いました。
―シェルビングで少し落としてという。
富岡氏)そうです。
―周波数特性とか位相とか解像度、定位とかいかがでしたか。
富岡氏)平均して高評価でした。音源の忠実性も含めて良かったですね。
―KSD C5を導入後何か変わった点、良かった点はありますか。
富岡氏)ラージのスピーカーで音量を下げて聴くのとは違い、C5で聴くことで音量感やノイズのチェックが容易に出来るのは良かったです。
―お仕事のジャンルはいろんなものがるんですか。
富岡氏)はい、歴史のあるレコードメーカースタジオなので多様です。古いSP盤レコード音源なども扱いますし、新人発掘で若い世代のアーティストさんの作品もマスタリングしたりします。
―なるほど。
富岡氏)基本的にメーカーのエンジニアなのでジャンル問わず。童謡もありますし、JAZZ,Clasicなんでもですね。
―なるほどですね。モニタースピーカーとしてもノンジャンルを問われるというか。
富岡氏)基本ノンジャンルですね。機材もエンジニアもオールマイティを求められます。
―富岡さんの作業はこの部屋に限られますか。
富岡氏)音作りはここで。チェックなどは他の部屋でもやります。
―田林さんにお聞きします。他にもいくつか部屋があるんですね。
田林氏)ここ南麻布のスタジオには、マスタリングスタジオが2部屋、ミックススタジオが 2 部屋。あとレコードカッティングスタジオが1部屋あります。
―カッティングですね。素晴らしい。
田林氏)またここ以外にもサテライトでマスタリングが 3 部屋あります。コロムビアのマスタリングスタジオは実質 5 部屋で回しています。
―スタジオの数があるってことはそれだけ仕事量が多いんですね。
田林氏)扱うタイトル数はメーカーなので比較的多いと思います。自社制作の 7,8 割は社内のマスタリングスタジオを使っています。
―ほかの部屋のモニターはムジークやGenelecですか。
田林氏)そうですねGENELECが多いですが、B&W の部屋もあります。
―スモールは。
田林氏)ムジークRL906か KSD C5 ですね。
―そのかなではKSDはちょっと異色というか。
田林氏)そうですね。富岡が選定した時は「おー、若いエンジニアの意見は違うなあ。」と思いましたね。しかし本人が納得しているなら良い選択だと思いました。
―本国のドイツではもちろんマスタリングで上位機種はラージモニターとして使われていますし。日本になじみがないだけでこれからだと思います。
田林氏)KSDのラージを導入されているスタジオでの実績はありますか。
―はい一か所あります。同軸のC120-Coaxが導入されています。
田林氏)同軸はいいですよね。特にマスタリングでは。
―そうですねKSDはやっぱり同軸っていう。
田林氏)僕らマスタリングエンジニアは特に位相を気にするので。やっぱり同軸のほうが判断しやすいと思います。KSD もそうですし、同軸を基本に選んじゃいますね。
―今回は貴重なご意見ありがとうございました。
<プロフィール>
富岡 真紀 (Maki Tomioka)氏
マスタリング・カッティング エンジニア
熊本出身
2020年より日本コロムビア株式会社に所属。
制作者の意向を汲み取り、曲の良いところを最大限活かし、どんな表現も表すことをモットーに 何事も楽しみながら作品作りを行う目下伸び盛りのエンジニア。
教育物からJ-POP/ROCK、さらには演歌まで幅広い現場を経験中。
またカッティングエンジニアとしても、武沢茂に師事し、 アナログならではの魅力をうみだす、カッティングの粋を習得中。